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社員が定時になったらさっさと帰ろうとするのも、牛丼屋で無言で料理が提供されるのも、それは別に普通のことであって「けしからん」ことではない。

日本人は契約内容以上のサービスを相手に求めすぎ 脱社畜ブログ 2014-01-09


会社で働いて給料をもらうのも、あるいは牛丼屋で280円の牛丼を注文して食べるのも、その根底には「契約」が存在している。

「契約」というのは、大雑把に言ってしまえば約束のことだ。会社員は雇い主に対して一定の労務を提供し、雇い主はその対価として賃金を払うことを約束する。牛丼屋は客に注文されたサイズの牛丼を提供することを約束し、一方で客はその対価を支払うことを約束する。

お互いがお互いの義務について約束をすることで、契約は成立する(双務契約の場合)。そして、この約束した義務にない行為は、しなくても契約という点からは咎められることはない。労働者は最初に約束した時間の範囲で労務を提供すればいい。牛丼屋も、牛丼を提供して客が食べられるような状態にすればいい。定時後や休日に無償で働いたり、笑顔で一緒にあたたかいお茶を出したりしなくても、「契約」上の義務は十分に果たしている。

しかし、現実にはこういう「契約上の義務だけを果たす」という態度を取ると嫌な顔をする人が多い。多くの日本人は、契約内容以上のサービスを相手に求める。業務時間が過ぎたからといって、職場の周囲の事情を気にせずに自分だけさっさと帰る人は、社会人の常識がないと批難される。店員が無愛想で客にお茶を出さない飲食店も、あそこはサービスが悪い、けしからんと言われてしまう。別に、そんなことは最初の約束の範囲には入っていないのにも関わらず、サービスをしないほうが悪いという感じで過剰な要求がつきつけられる。

なんでこんなに日本人は契約内容以上のサービスを相手に求めるのか、個人的には大きく2つあると思っている。

1つ目は、
日本人はそもそも「契約」という関係を意識することが少ない
ということ、

2つ目は、
日本ではお金を払う側が払った以上のサービスを受けられることがあまりにも多い
ということだ。

1つ目について、
これは結構いろんなところで言われているけど、日本人は欧米人と比べると「契約」をしっかり交わす、という意識が低い。日本の会社では、就職後にジョブディスクリプション(職務記述書)で職務内容をしっかり決めるようなことはほとんどされないし、給与の額についても「交渉」で決まるよりかは「会社内の規定」によって決まる。会社で自分が働いているという状態を、「自分はこの会社と契約関係にあって、自分の義務は◯◯、相手の義務は◯◯」というように明確に意識している人はまずいない。契約しているという意識がないので、自分の義務の範囲も当然曖昧になる。サービス残業のような明らかに契約上の義務を超えた行為も「どの会社でもやってることだし、まあ仕方がないか」となってしまう。

2つ目について、
日本ではお金を払って「客」になりさえすれば、払った額に関係なく高水準なサービスが受けられる。店員さんは時給900円のアルバイトでも笑顔で感じがいいし、料理の提供が少しでも遅れれば本当に申し訳なさそうに頭を下げる。これは言ってみれば「好意」で契約内容以上のことまでサービスをしてくれているわけだけど、みんながこの水準でサービスを提供しはじめると、いつしかこの好意のサービスが「あたりまえ」になり、好意のサービスを提供しないやつはけしからん、となる。牛丼屋で店員の接客態度を詰る人を見たことがあるけど、たかだか数百円の出費でそんなにすばらしいサービスが受けられて当然と思ってしまうのは、このへんの間隔がズレてしまっているからだ。

こういう考え方が、もしかしたら世界に誇る日本の「おもてなし」形成に一役買っているのかもしれないが、

「おもてなし」はもてなす側が自発的に好意で行うからすばらしいのであって、サービスの受け手が「もてなされて当然」と思うのは間違っている。

契約内容以上のサービスは、提供されないほうがむしろ普通なのだ。

社員が定時になったらさっさと帰ろうとするのも、牛丼屋で無言で料理が提供されるのも、それは別に普通のことであって「けしからん」ことではない。契約内容以上のサービスを受けたいなら、それ相応の対価を払って再度契約を結び直すのがスジである。その手続を踏まずに、よくわからない理屈を振りかざすのはものすごくみっともない行為に僕には思えてしまう。

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だからといって現在の日本ではそれは通用しない。牛丼屋は別に高いサービスはしなくてもよい。しかし、最低限のサービスはする必要性はあるだろう。無言提供なんてもっての他。会社の信用が下がるだけである。
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